『裸一貫!つづ井さん』の感想レビュー!みんなもオタクになろう

  • 2020年2月18日
  • 2021年8月19日
  • マンガ

『裸一貫!つづ井さん』をたまたま読んだ

先日『うさぎドロップ』を読もうと思って、徒歩2分の場所にあるツタヤに行った。

7冊だけ借りたかったのだけど、キャンペーンで10冊借りても値段が変わらなかったから、「この漫画がスゴい!」の棚から適当に3冊選んだ。

そのうちの一冊がこの「裸一貫!つづ井さん」なんだけど、これがまあ面白かったからレビューしようと思う。



『裸一貫!つづ井さん』のレビュー・感想

まず絵が適当すぎて面白い。

でも、それがゆるい感じでちょうどいい。

主人公は20代後半のOLで腐女子のつづ井さん。

そんな私も気づけば20代後半・・・
同級生の結婚&出産ラッシュ・・・
職場などでは日々「いつまでそんな感じなの?」「ちゃんと将来考えなよ~」と言われ、私は・・・私は・・・
特にな~んとも思ってませ~ん
ピッピロピ~~

つづ井『裸一貫!つづ井さん』第Ⅰ巻

恋愛とは程遠い生活をしているのだけど、本人はなんとも思っていない。

そんなつづ井さんも魅力的なんだけど、本書の特徴はなんといってもつづ井さんの仲間たちだ。

オタクで腐女子のMちゃん。オタクで腐女子のオカザキさん。オタクで腐女子の橘。オタクで腐女子のゾフ田。

それぞれ、ジャニーズだったりアメコミだったり女性アイドルだったり、趣味趣向は違うがいつも五人で集ってよく分からない遊びをしている。

たとえば夜中の公園遊び。

架空の推しを作って紹介し合う遊び。

お風呂は面倒な作業だから、お風呂から上がってきた人を精一杯讃える遊び。

念のために入っておくけど、彼女たちは女子高生ではない。

社会の荒波にもまれながら生きている20代後半の立派な大人たちだ。

だが、それがいい。それがいいのだ。


・『裸一貫!つづ井さん』の半現実性

「日常系漫画」のほとんどは「日常系」という「非日常」を描いている。

あなたの周りにも、「日常系」のキャラを真似して痛い感じになってしまっている人間がいなかったろうか。

それは「日常系」の漫画がフィクションとしてしか成り立たないからだ。現実と虚構は違う。

しかし『裸一貫!つづ井さん』は、まるで小学生の夏休みの絵日記のような現実感がある。

限りなくリアルの人間に近い感じでキャラクターが存在しているのだ。

まさに裸一貫。

こうした現実感を出せている秘密は、漫画っぽくない絵や、SNSなど出見られるようなくだけた文体を多用していることにあるだろう。


・『裸一貫!つづ井さん』の作為性

登場人物のオタク濃度も、濃さは出しつつ親しみやすいレベルに加減されている。

作者はバーテンダーの道を歩んだとしても、おそらく成功しただろう。

だが、現実世界の彼女たちを見て同じように楽しめるかといえば、もちろんそうではない。

彼女たちを漫画という虚構世界に落とし込み、デフォルメし、面白がられるコンテンツへと昇華させた技量は並大抵ではない。

また、漫画である以上「裸一貫」ということはあり得ず、登場人物の内面は作者の思うままに操作されているはずだ。

にも関わらず、「裸一貫!」というタイトルの言葉のせいで、あたかも「ありのまま」であるかのような錯覚に陥らせ、結果的に作品の現実感と人物の魅力を底上げしているのだ。

そうした現実と非現実の線引きをぼやかすテクニックがかなり高い。

『裸一貫!つづ井さん』は限りなく日常に近い日常系漫画として、確固たる地位を築いたように思う。


『裸一貫!つづ井さん』で印象に残った場面

僕が一番印象に残ったのは、友人のMちゃんが街コンに行った話。

男の人と話せるようにならなければと思って始めた街コン。

練習?の成果もあって、何度か男の人と食事をしたりもするようになった。

だけど、いつもふと思うのは、みんなと遊んだとき(腐女子会)のこと。

あのときの充実感と比べたら、「私こんなとこで何やってるんだろう?」ってなるそうだ。

相手に失礼すぎるんだけどどうしても皆との時間より優先したいとは思えなくて・・・

つづ井『裸一貫!つづ井さん』第Ⅰ巻

そんなこと言ってるから脱非リアできないんだよ!という意見もありそうだけど、個人的にはとても分かる。

共通の趣味で通じる仲間とか集団の楽しさって、男女の関係では生じない何か(熱さみたいなもの)があるよね。

まあそんな機会滅多になかったけど。

いや、あまりなかった分その体験を懐かしむから記憶補正かかってんのかな?

まあいいや、とにかくそういう熱さみたいな何かをこの漫画でも感じて、「なんかオタクっていいな」ってなった漫画だった。

うん、僕もオタクになろう。

そしてみんなもこの漫画を読んで、みんなオタクになろう。

単行本(ソフトカバー): 184ページ
出版社: 文藝春秋
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