『サイコパス3 FIRST INSPECTOR』を観た
『サイコパス3』の続編となる本作は、アニメの終わり方が不完全燃焼だっただけに待望の映画だった。
三部作は劇場で公開されたが、同時にAmazonプライムビデオでも公開された。
こんな時代が来るなんて素敵すぎると思う。
ここではそんな『サイコパス3 FIRST INSPECTOR』の考察を書いていきたい。
[adsense]『サイコパス3 FIRST INSPECTOR』の考察
・『サイコパス3』の光と闇
『サイコパス3』は光と闇の二項対立構造がはっきりしていた。
たとえば、
- シビュラ(光)とビフロスト(闇)
- 慎導灼(光)とイグナトフ(闇)
- 行動課(光)とピースブレイカー(闇)
といった対立だ。
そうした対比が、『サイコパス3 FIRST INSPECTOR』ではより顕著に描かれていたように思う。
この中で、シビュラはビフロストを取り込み、行動課はピースブレイカーを始末した。
ただ、イグナトフについては、今作で闇に落ちることはなかった。
しかしこうした対比から考えるに、次回作以降で執行官落ちすることが予想される。
[adsense]・ビフロストとはなんだったのか?
『サイコパス3 FIRST INSPECTOR』ではっきりしたのが「ビフロスト」についてだ。
ビフロストは、シビュラのデバッグ(システムのエラーなどを見つけて修復する役目)であるということだった。
つまり、シビュラとビフロストは表裏一体のシステムということになる。
常守朱もどこかで、「シビュラという巨大なシステムが単体で存在することは考えにくい」と言っていたので、その伏線を回収した形にもなった。
ただ、シビュラは当初よりもシステムがアップグレードしたので、もはやビフロストの助けを借りる必要はなく、物語の最後ではビフロストを吸収した。
つまり、シビュラはまた一歩完璧な社会システムに近づいた、というのが今回の映画では強調されていたように思う。
[adsense]・「火」で繋がる新たなチーム
今作で法斑静火が悪役ではないことが分かったことから、新たな関係性が浮かび上がってきた。
それは、
- 慎導灼(しんどうあらた)
- 炯・ミハイル・イグナトフ
- 法斑静火(ほむらしずか)
の3人全てに「火」というキーワードが入っていることだ。
火は赤い色であり、「赤」はシビュラ社会が目指すクリーンな「青」と対になる色だ。
そして何より、赤と言えば常守朱(つねもりあかね)の「朱」が思い浮かぶ。
こうしたことから、シビュラ社会に対立する存在として、「赤」を共通項とした人物が設定されているのではないだろうか。
さらに赤といえば、常守を慕っている雛河翔の髪色も赤だ。
つまり、
- 常守朱
- 法斑静火
- 慎導灼
- 炯・ミハイル・イグナトフ
- 雛河翔
この「赤い」5人がチーム常守として、進化を続けるシビュラに疑問を突きつける役割を担っていると考えられる。
逆に言えば、今後の『サイコパス』シリーズで「赤」を連想させる人物が登場すると、その人物は常守側の人間であることが予想されるだろう。
ちなみに3期の局長の名前は細呂木晴海。
海は青色を連想させることから、常守との対比を表していると言える。
[adsense]・局長の名前が禾生壌宗から細呂木晴海に変わった理由
今作で細呂木晴海はビルから落ちて、報道ドローンのいる公衆の面前で死んだ(ことになった)。
本来なら、ここで双子という設定を出して、姿の似ている新局長が就任する場面だろう。
だがその手法は、
- 局長が禾生壌宗から細呂木晴海に変わるときに使われた
というのが僕の推論だ。
ではなぜ局長が禾生壌宗から細呂木晴海に変わったのか。
それは常守朱が収監されていることと関係していると考えられる。
『サイコパス3』のエピソード1「ライラプスの召命」の冒頭で、常守朱に関すると思われるラジオが流れる。
内容は、
公安局×××××××××事件で、厚生省は現行犯逮捕された×××××××××元監視官のサイコパスを非公表としています。
というもの(×××はノイズで聞こえない箇所)。
さらに、3話で廿六木天馬が常守のことを
「あの人殺しの執行官」
と言っていたので、常守が誰かを殺害したらしいことが読み取れる。
その相手はおそらく禾生壌宗。
今のところ、表向きにも裏向きにも一番の大物は禾生壌宗局長で、それなりの理由があれば彼女を手にかけることはあり得る。
となれば、もちろん禾生壌宗は表舞台から姿を消し、その時に双子であるという設定の細呂木晴海が新局長になったのではないか。
だから、名前が変わったのではなく、人物そのものが変わったというのが正解だろう。
もちろんシビュラなので人物は変わらないが、一般大衆的はシビュラシステムの全貌をまだ知らないので、そうした設定が必要だ。
[adsense]犯罪係数と「愛」の関係
最後には、
- 犯罪係数と愛
の関係を考察していこう。
この命題は、個人的に『サイコパス』シリーズのラストに繋がってくると考えている。
『サイコパス3』では、六合塚弥生(くにづか やよい)が更生して社会復帰した。
そして、『サイコパス3 FIRST INSPECTOR』では唐之杜志恩(からのもり しおん)が社会復帰した様子が描かれている。
潜在犯になった人間が社会復帰することは「都市伝説」と言われるほど難しいが、彼女たちはそれを成し遂げたのだ。
つまり、彼女たちを考察することで、一度潜在犯化したほどの犯罪係数をクリアにする方法があるのではないか。
結論からいうと、僕はその方法が「愛」であると考えている。
六合塚弥生と唐之杜志恩は恋人という設定だ。
実はこの『サイコパス』シリーズで恋愛がはっきりと描かれているのは、この2人だけなのだ(2人は身体の関係も描写されている)。
そして、『サイコパス3 FIRST INSPECTOR』では、入江一途と如月真緒の恋愛が「ほのかに」描かれる。
可能性として、この2人の社会復帰もあり得るかもしれない。
「ほのかに」でいうと、常守と狡噛の2人もそんな雰囲気を漂わせることがある。
個人的には、この「愛」で狡噛が贖罪を乗り越えたあたりが『サイコパス』のラストシーンになるのではないかと思っている(願望と言ったほうが正しいか)。
[adsense]『サイコパス3 FIRST INSPECTOR』の感想
以上、『サイコパス3 FIRST INSPECTOR』を含めた『サイコパス3』の考察をしてきた。
まとめると、『サイコパス3 FIRST INSPECTOR』はかなり面白かった。
『サイコパス3』が不完全燃焼だった分、余計にそう思うのかもしれない。
個人的に特に良かったのは、
- イグナトフと慎導灼の対比
- 唐之杜志恩の活躍
- シビュラシステムと梓澤廣一の対峙シーン
といったところだ。
やはり、シビュラシステムが表に出てきたり、物語の間テクスト性(他作品を引用した例え話など)があったりするのが『サイコパス』らしくて好きだ。
今作初登場ながらも、梓澤廣一のキャラクターが上手く描かれていたことも良かった。
シーズン4も楽しみではあるが、とりあえずはお腹いっぱいになった、そんな気分だ。